8月4日 2日目
頭痛と共に目が覚める事ほどいやな物はない。
時刻は午前5時頃だったろうか、まだ起きるには早すぎるのだが、横になっていても頭痛が収まる気配も無いので仕方なく外に出ると、予報通り雨が降り始めていた。
頭痛と雨のダブルパンチで鬱々とした気分になるが、昨日の結果が予想以上だったのでそれがせめてもの救いだ。
トールさんは本日の競技に向けて着々とバイクの整備を進めていた。
旅先での部品の調達はバイクによっては不可能な場合があるが、入手が容易な部分での破損で済んだのが幸いだった。
昨日走れなかった分を今日は存分に楽しみたいところ。
遠雷と共に雨脚が次第に強くなり始めた。
突然、閃光と共に大地をも揺るがす大きな雷鳴が。
この日は北陸や東北地方で過去に例のない記録的な大雨が降った。
前線が日本海から北陸地方を通って東にのびており、我々は巨大な雨雲の真下にいるような状況、本日の目的地、石川県能登島に向かって雨雲と一緒に移動するようなものだった。
朝食後、恒例の記念撮影を行って雨の中競技がスタート。
昔は雨の日にバイクは乗りたくなかったのだが、仲間と一緒だとそれなりに楽しかったりする。
私のベスパは入手当時、雨の中を走ると確実に止まるバイクだった。
流石イタリアのバイク、ベスパだしね、こんなものなのかなと、変な納得をしていたものである。
さて、ベスパであるが、初日の走行をふまえ、オーバーヒートが怖かったのでメインジェットを120から130に交換。
後で思うのだがこれが大きな間違いだったのだろう。
この後私のベスパは本当に走らないバイクになってしまうのだった。
1区、岐阜県下呂市、お世話になった宿「美輝の里 ホテル美輝」を出発し馬瀬川を右手に南下していくルートで、ポイントとなる道の駅「清流の里 しろとり」まで約67㎞の移動。
この区間はそれほど激しい雨には当たらず、ポイントとなった道の駅ではまだ皆さんの表情から僅かに余裕が伺える。
2区は国道158号九頭竜湖を経由、目的まで約69㎞。
この辺りから雨が激しくなりはじめ、左手に見える九頭竜川は凄まじい濁流となっていた。
道路上には何か所にも大きな水たまりが出来ていて、まるで池の中を走っているようだった。
ここまでの雨となると、もはや雨具は何の意味もない。
誰もトラブル起こすことなく走っていたが、流石に2区間を終えたところであまりにも雨が激しいので競技が中止になった。
2区は158号から157号へ進み、山の駅よろっさがポイントだったが、
激しい雨の為157号線長山町から先が通行止めとなっていた。
この区間私はリアオフィシャルだったのだが、一緒にスタートしたI藤さんのイエローデスモがエンジン不調でストップ。
悪天候により進行に大幅な遅れが出ていたことから、第2ポイントからすぐの場所にあるコンビニで急遽昼食を取り直接宿へ向かうことになる。
ご当地カップ麺ぐらい食べればよかったかな、、、、。
この場所から宿までは約160㎞
コンビニで腹ごしらえをしてから、とりあえず宿までひとつにまとまっての走行となった。
どのルートを走ったか?私は地図とにらめっこしながら記憶を辿っているのだが、
途中ジョージアさんのCB125がストップしトランポにバイクを積載した辺りで本体がバラバラになってしまった。
われわれはギラギラさんのシルバーショットガン、ウタさんのR27、T嶋さんのV-Strom、SさんのR80GS、てっちゃんのCB125、そして私のベスパの6台で宿に向かうことに、排気量から国籍からごちゃまぜであるが、改めてベスパは、良く走ったなぁと思う。
一向に止む気配のない雨の中、何か所かで休憩しながら前進を続けたが、この道中はとにかく凄まじかった。
市内はあちこちで渋滞が発生し車の脇を縫って走ったが、
先頭を走るT島さんが突然停止、「だめだ!だめだ!」と手を振っているので何事かと思ったら、渋滞の先の道が冠水で大きな池になっていたのである。
国道305号は広い範囲で冠水、すぐさま来た道を引き返そうとすると、もう足首位まで水が来ていて、辺り一帯がさらに増水している様だった。
水の無いところまで移動し北陸本線の陸橋下で雨宿り、一旦宿までのルートを再考することにした。
私は体調不良と非力なバイクで皆に着いていくのがやっとだった。
せめてこの状況の記録だけと思ったが、あらゆるものがずぶ濡れでカバンからカメラを出す気が起きなかった。
宿までまだ90kmはあるあたりで、時刻は間もなく17時になろうかというところ、兎に角宿まで走るしかないのだがこの90㎞は遠かった。
結局県道22号を、冠水場所を迂回しながら走り国道8号へ。
159号線石川県かほく市のコンビニで最後の休憩を取った時には時刻は間もなく19時になろうとしていたが、この時雨はすっかり上がり、まだ明るい空には薄っすらと虹がかかっていた。
能登島に近づくと先方の夜空に花火が上がるのが見えた。
打ち上げられる花火を横目に能登大橋を通過、日中のあの土砂降りの中とは大違いのなんとも穏やかな時間。
過酷な一日を癒すかのような最高のシチュエーションだった。
能登島大橋は花火見物をする人たちでいっぱいだったが、花火に目もくれず走っていく6台のバイクは一体どんな風に映ったであろうか?
そして宿に到着、時刻は既に21時を過ぎていた。
バイクを降りると疲労と安堵感で、しばし動くことが出来なかったが、
なんとか宴会場へ、漸く仲間と合流。
あまりにも疲れすぎて、美味しい食事もほとんど味わうことが出来なかった。
本体がバラバラになってから150㎞を6時間近く掛かって移動してきたのだ。
この日は2区間での競技が成立。
私は1区でしぶとく2位につけたが、順位の変更は無かった。
ラリーに参加して16回目になるが、この日の事は生涯忘れることは無いだろう。
3日目へいや